マフィア映画には、アクション映画にはない戦い方の描写があります。
それは、一瞬の決着です。
アクション映画では、銃撃戦などを派手にやりますが、
マフィア映画では一方的な攻撃が多いです。
攻撃が始まるまでは緊張感が漂う演出があって、
攻撃が始まったら片方がもう片方を一方的に攻撃し、戦いが終わります。
なぜこんな戦い方の演出なのかというと、戦いが始まるまでの攻防が見所だからです。
おそらくアクション映画の派手の銃撃戦などは、西部劇からの流れなんでしょう。
派手に撃ち合うというスタイルで魅せる映画。
マフィア映画の場合、最少限度の人数で、被害を最小限に抑えながら、
いかに確実に相手を殺すかということを練ってから攻撃しているので、こういうことになるんだと思います。
確実に相手を殺すためには、大前提として相手に気づかれないで作戦を実行するということが大事です。
知られてしまったら反撃されますからね。
こちらは相手を発見し、相手はこちらを発見しておらず、
殺されかけていることに気づいていないという状況が襲撃にはベストです。
この状況を作り出せば、相手が油断して日常生活を送っているときに奇襲をかけることができます。
よっぽどのトラブルでも発生しない限り、こちらの損害ゼロで相手を屠ることが出来ます。
なので、この状況をいかに作り出すかということが大事です。
攻撃側は相手を発見するために、相手がどこにいるのかを突き止め、
そこにひそかに実行部隊を送り込めばいいのですが、狙われる側も隠れ家に移動したりして、発見されないように努めます。
これが、いわゆる情報戦です。
情報戦の後に、銃撃戦があるわけで、本来は銃撃戦が行われているときは、すでにどちらかが情報戦において優位に立っており、一方的な攻撃しか行われません。
ドンパチやっているときは、すでに勝敗が決しているわけですね。
この情報戦が実際の映画で描かれているシーンを、
私が最も好きなマフィア映画のひとつ、伝説の名作「ゴッドファーザー part1」を使って、例を挙げてみます。
ここから先ネタバレあり注意です。
ドン・コルレオーネ(マーロン・ブランド)は襲撃された後で一命を取りとめながら病院に収容され、危篤状態のドンに対して二度目の襲撃の危機が訪れるシーンです。実は誰もドンの危機を危機とも思わず、病院に護衛部隊を配置したりしないのですが、ドンの息子マイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)だけが危険を察知し病院に向かい、まずドンの病室を移します。
その後で、その場にいたカタギの人間と二人で病院の前で見張り役然として立っているシーンです。
マイケルの危惧通り、敵組織の車が静かに到着します。彼らは攻撃側であり、危篤状態のドンを消そうとやってきたわけで、当然実行部隊は複数人おり、武装もしています。彼らは車の中からマイケルとカタギの人間を見つけます。
対してこちらはマイケルと、カタギの人間一人。武装もなし。本来であればこれでチェックメイトです。
ところがマイケルとカタギの人間は、見張り役然として立っており、
さらにマイケルの機転でコートの懐に手を伸ばし、銃の存在を匂わせます。
実はこれ、情報戦の観点から言うとメッセージは「俺たちは銃を持っているぞ」ではありません。
「我々はすでにここに武装した見張り役を二人配置している。
つまり、襲撃を予期しており、病院の中にも多数の武装した構成員がいる。
そのまま襲撃してくるなら、待ち伏せしている護衛部隊が迎撃するぞ。」
が正解です。だから、その後なにもせずに(なにもできずに)襲撃の実行部隊の車は去るわけです。
今回は被攻撃側のブラフにより窮地を脱したわけですが、
もしマイケルが危機を危機と認識せず行動を起こさなければ、ドンは一方的に攻撃されて消されていたことでしょう。
マフィア映画のこういう情報戦は、見所のひとつです。
というわけで、そんな「発見されたら終わり」「部屋を特定されたら実行部隊を送り込まれて終わり」
というゲーム性があるカードゲームが七人の殺し屋です。このゲームの舞台は病院ではなくホテルですが、
マイケルがやったみたいに、
一度敵に「この辺りだろう」と当たりをつけられた部屋を移動させるということもできます。
ターゲットはどの部屋にいるのか?いかに相手を出し抜いて、自分のボスを守りぬくか?
先にボスを発見したほうが勝ちの対戦ゲームです。発見されたらその時点で負け。敵組織に消されます。
という感じのゲーム性に惹かれる人はぜひやってみてください。
本当は、ホテルならではのロビーやバー、フロント、エレベーター、非常階段など、
マフィア映画っぽい舞台をいろいろ出してみたかったんですが、それは次回以降に回すこととします。
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